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バレエは、優雅さと力強さが融合した美しい芸術ですが、その繊細な動きの裏側には、ダンサー特有の怪我のリスクが潜んでいます。特に、アキレス腱炎は、プロのバレエダンサーからバレエ学校の生徒まで、幅広い層に発症する頻度の高い障害として知られています。本稿では、長年にわたり多くのバレリーナを苦しめてきたアキレス腱炎の原因、症状、そして近年注目を集める革新的な治療法であるBFR(血流制限)リハビリについて詳しく解説します。
遡ること数年前、私たちは著名なバレエ団である新国立劇場バレエ団、谷桃子バレエ団、東京シティバレエ団のご協力のもと、クラシックバレエにおける怪我の大規模調査を実施しました。この調査によって、捻挫、アキレス腱炎、靭帯損傷、腰痛などが、バレエダンサーによく見られる障害であることが明らかになりました。中でも、アキレス腱炎は、プロのバレエダンサーとバレエ学校の生徒の両方において、高い確率で発症するバレエ特有の障害であることが判明したのです。
さらに、アキレス腱炎は単なる腱の炎症に留まらず、その周囲の組織にまで炎症が広がるアキレス腱周辺炎や、腱と骨の間に存在する滑液包に炎症が生じる滑液包炎といった、多様な病態を引き起こす可能性があります。多くの場合、アキレス腱炎の治療は、安静と整形外科医の指示に基づいて行われます。しかし、ここで問題となるのは、痛みが完全に消えるまで十分な休養を取らず、痛みが和らいだ段階でレッスンを再開してしまうケースが少なくないことです。その結果、アキレス腱炎が慢性化し、長期間にわたってダンサーのパフォーマンスを阻害してしまうことがあります。
では、一体アキレス腱炎とはどのような状態なのでしょうか?アキレス腱は、ふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋といった下腿三頭筋と、かかとの骨(踵骨)をつなぐ非常に重要な腱です。歩行や走行といった日常的な動作はもちろんのこと、身体のバランスを維持する上でも欠かせない役割を担っています。
クラシックバレエにおいては、特有の動作がアキレス腱に過度な負担をかけることがあります。代表的なものとして、かかとを高く引き上げるルルベや、ポアントで両足を広げるエシャッペなどが挙げられます。これらの動作において、本来とは異なる筋肉を主導筋として使ってしまうと、アキレス腱に過剰な負荷がかかり、炎症を引き起こすことがあります。このように、誤ったバレエテクニックが原因となって発症するアキレス腱の炎症は、バレエ障害の典型的な例と言えるでしょう。
アキレス腱の炎症は、さらにその周辺の軟部組織に炎症を波及させることがあります。また、腱が骨に付着する部分にある滑液包にも炎症を引き起こし、痛みを増幅させる要因となります。このバレエ障害は、バレエを始めたばかりの小学生から、中学、高校生、そして成人ダンサーまで、年齢やレベルに関わらず発症する可能性があります。
バレエのレッスン回数や時間が増加することも、アキレス腱炎の大きな原因の一つです。特に、近年では発表会やコンクールへの出場を目指すダンサーが増加傾向にあり、それに伴ってレッスン回数とレッスン時間も増えているため、アキレス腱に過労が蓄積し、炎症を発症する症例が多く見られます。従来の治療法では、傷ついた腱組織の回復を待つために、レッスンを完全に休止するしかありませんでした。
鍼やマッサージといった治療法が試みられることもありますが、物理療法を除き、決定的な治療法は確立されていませんでした。鍼治療によって一時的に痛みが軽減したとしても、帰宅する頃には再び痛みがぶり返してしまうといったケースも少なくありません。その結果、多くの中高生のバレエ学校生徒が、慢性的なアキレス腱炎に悩まされている現状があります。
長年、効果的な治療法が確立されていなかったアキレス腱炎に対し、近年、高い治療効果が確認されているのが、BFR(血流制限)トレーニングベルトを用いた運動療法、すなわちBFRリハビリです。私たちは、急性期のアキレス腱炎や慢性化したアキレス腱周辺炎に苦しむバレエ学校の生徒と成人ダンサーに対して、BFRリハビリによる治療を試みました。その結果、驚くべきことに、わずか1回の施術で痛みが10分の1にまで軽減し、その後、痛みは自然に治癒したのです。
このように、アキレス腱炎に対して1、2回の治療で即効性のある鎮痛効果が確認された事例は非常に稀であり、BFRリハビリは、アキレス腱をはじめとする様々な腱炎や腱周辺炎に対する画期的な鎮痛療法として、大きな期待が寄せられています。
BFRリハビリの大きなメリットは、患部にメスを入れる必要がないことです。実際、アキレス腱断裂を起こした高校生バスケットボール選手の治療など、他のスポーツ障害の治療においてもBFRリハビリは目覚ましい効果を上げています。これらの豊富なスポーツ障害治療の経験を基盤として、BFRリハビリはバレエダンサーのアキレス腱炎治療においても、これまでにない高い効果を発揮しているのです。
アキレス腱炎は、バレエを愛する全ての人にとって、避けては通れない課題の一つかもしれません。しかし、BFRリハビリという新たな治療法の登場は、これまで慢性的な痛みに苦しんできた多くのダンサーにとって、希望の光となるでしょう。もしあなたがアキレス腱の痛みにお悩みであれば、ぜひBFRリハビリの専門家にご相談ください。再び痛みなく、優雅に舞える日がきっと訪れるはずです。
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