トレーニング現場の安心を守る!東京都「カスタマーハラスメント防止条例」施行と私たちBFRトレーナーの新たな視点2025年4月、東京都は全国に先駆けて、顧客からのハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防止するための条例を施行する方針を固めました。この条例は、トレーニングジムやパーソナルトレーニングの現場で、お客様からの迷惑行為に悩むトレーナーの方々にとって、大きな一歩となるでしょう。今まで「我慢」してきた現場へ「お客様は神様」という言葉が、時に歪んだ形で解釈され、サービス提供者である私たちトレーナーが、お客様からの理不尽な要求や迷惑行為に対して、声を上げにくい状況を生み出してきました。特に、マンツーマンでのトレーニング指導というパーソナルな空間では、その傾向が強まることも否めません。しかし、本来、お客様との信頼関係、そして対等なパートナーシップがあってこそ、質の高いトレーニング指導は実現します。お客様の目標達成をサポートするためには、トレーナーが安心して業務に集中できる環境が不可欠です。今回の東京都の条例施行は、まさにそうした環境整備の後押しとなるものです。この機会に、私たちBFRトレーナーも改めてお客様との関係性を見つめ直し、より健全でプロフェッショナルなトレーニング環境を築いていきましょう。東京都「カスタマーハラスメント防止条例」とは?この条例では、カスハラを「客から就業者に対し、業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と明確に定義しています。そして、「何人もあらゆる場においてカスハラを行ってはならない」と、その禁止を謳っています。条例の背景には、個々の職場や事業者の努力だけでは解決が難しい、社会全体でカスハラに対応していく必要性があるという認識があります。本来、お客様からの貴重な意見や要望は、サービス向上に繋がるものですが、社会通念を逸脱した迷惑行為は、働く人の尊厳を傷つけ、健全な就業環境を損なうものです。この条例は、お客様と働くすべての人が対等な立場であることを前提とし、お互いを尊重し合い、カスハラのない公正で持続可能な社会を目指すという理念を掲げています。難しい言葉で書かれていますが、要するに「お客様も私たちも、互いに尊重し合うべき」という、至極当たり前のことを改めて確認するためのものと言えるでしょう。「違法な行為」と「不当な行為」:線引きを理解する条例では、カスハラに該当する行為として、「違法な行為」と「不当な行為」を挙げています。違法な行為これらは、刑法などの法律に触れる可能性のある行為です。具体的には、暴行、傷害脅迫強要名誉毀損侮辱業務妨害不退去などが該当します。これらの行為は、明らかに許されるものではなく、毅然とした対応が必要です。不当な行為こちらは、法律に直接触れるわけではないものの、社会通念上相当とは認められない迷惑行為です。例としては、申出の内容が相当と認められない場合事業者の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合申出の内容が、事業者の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合行為の手段・態様が社会通念上相当と認められない場合身体的な攻撃(触る、叩くなど)精神的な攻撃(大声で怒鳴る、暴言を吐くなど)威圧的な言動(高圧的な態度、脅迫的な発言など)土下座の要求執拗な言動(何度も同じ内容を繰り返す、長時間にわたるクレームなど)拘束的な行動(身動きを封じる、帰らせないなど)差別的な言動(人種、性別、年齢、職業などに関する差別的な発言)性的な言動(わいせつな発言、セクハラ行為)従業員個人への攻撃(SNSなどでの誹謗中傷、プライベートな情報の詮索)などが挙げられます。これらの行為も、働く人の心を深く傷つけ、業務遂行に支障をきたすものです。BFRトレーナーとして、今改めて考えるべきこと今回の条例施行は、スポーツジムという施設全体はもちろんのこと、私たちBFRトレーナー一人ひとりの働き方を見直す良い機会です。防止条例で示されている「クライアントとトレーナーが、まず対等な立場でお互いを尊重しましょう」という考え方は、本来、トレーニング指導の根幹にあるべきものです。お客様の目標達成を真にサポートするためには、一方的な指示や従属的な関係ではなく、信頼に基づいた協力関係が不可欠です。しかし、現実の現場では、お客様という立場を過度に意識し、不当な要求に対しても我慢してしまうケースが少なくないのではないでしょうか。「お客様だから…」と遠慮するあまり、心身に負担を抱えてしまうトレーナーもいるかもしれません。私たちBFRトレーナーは、専門的な知識と技術をもって、お客様の健康と目標達成をサポートするプロフェッショナルです。その専門性に対する自信と誇りを持ち、お客様と対等な立場でコミュニケーションを取ることが大切です。もちろん、お客様への感謝の気持ちや丁寧な対応は不可欠ですが、決して卑屈になる必要はありません。条例に罰則はないけれど…事業者の責務と私たちの権利今回の条例には、残念ながら直接的な罰則は設けられていません。しかし、その指針の中には、お客様と事業者双方への責務が明記されています。お客様に対しては「就業者に対する言動に必要な注意を払うように」と求められています。これは、お客様自身にも、自身の言動が相手にどのような影響を与えるかを意識し、責任ある行動を取ることを促すものです。そして、事業者に対しては、カスハラに関する相談窓口を設置し、就業者に周知すること相談を受けた際の対応マニュアルを作成することカスハラを受けた就業者への配慮(複数人での対応、メンタルヘルス相談など)カスハラ防止のための研修やマニュアル作成など、具体的な対策を講じるよう努めることが義務付けられています。これは、もし私たちがお客様からカスハラを受けた場合、ジムなどの事業者は、私たちの安全を確保し、迷惑行為の中止を申し入れたり、適切な措置を講じる義務があるということです。私たちBFRトレーナーは、自身の身を守るためにも、条例の内容をしっかりと理解し、もしもの際には事業者に相談する勇気を持つことが大切です。また、事業者側も、条例の趣旨を理解し、トレーナーが安心して働ける環境整備に積極的に取り組む必要があります。よりプロフェッショナルな関係へ東京都のカスタマーハラスメント防止条例の施行は、トレーニング業界においても、お客様とトレーナーの関係性をより健全でプロフェッショナルなものへと進化させるための重要な一歩となるでしょう。「お客様は神様」という言葉を盾にした不当な要求や迷惑行為は、決して許されるものではありません。私たちBFRトレーナーは、専門家としての自信と誇りを持ち、お客様と対等な立場で向き合い、互いを尊重し合える関係を築いていきましょう。今回の条例をきっかけに、私たち一人ひとりが意識を変え、行動することで、トレーニング現場からカスハラをなくし、お客様もトレーナーも、誰もが気持ちよくトレーニングに集中できる環境を実現できるはずです。今後も、東京都の条例の動向を注視し、私たちBFRトレーナー協会としても、会員の皆様が安心して業務に取り組めるよう、情報提供やサポートを続けていきたいと思います。